退職金を貯金すること自体が失敗ではない

預金には、元本の変動を抑えながら、必要な支出へすぐに対応しやすいという重要な役割があります。投資を始める場合も、先に預金を確保することが基本です。

預金は生活費を確保するために必要

投資信託には元本保証がなく、購入した価格を下回る可能性があります。老後の生活費や近い将来に使う資金まで投資してしまうと、値下がりしている時期に売却せざるを得なくなるかもしれません。

日常生活に必要なお金や、数年以内に支払う予定がある資金は、預金など値動きの小さい方法で確保するのが基本です。

例えば、毎月の生活費、住宅ローンの返済、医療費、介護費用、自宅の修繕費、車の買い替え費用などは、必要になる時期を想定して現金を残しておく必要があります。

預金と投資は役割が異なる

預金は、必要なときに使えるお金を確保する役割に向いています。一方、投資信託は価格変動を受け入れながら、中長期的な資産形成を目指すための商品です。

預金と投資信託のどちらが優れているかではなく、何のためのお金をどの方法で管理するかが重要になります。

退職金のうち、近い将来使うお金は預金で管理し、当面使う予定がないお金の一部を投資信託で運用するなど、それぞれの特徴を生かした資産配分を考えられます。

日本の家計では現金・預金の割合が大きい

退職金を預金で保有することは、特別に珍しい選択ではありません。日本の家計全体を見ても、金融資産の中で現金・預金が大きな割合を占めています。

金融資産の半分近くを現金・預金が占める

日本銀行の資金循環統計によると、2026年3月末時点の家計の金融資産は2,386兆円でした。このうち現金・預金は1,126兆円で、全体の47.2%を占めています。投資信託は165兆円で6.9%、株式等は398兆円で16.7%でした。※2

この数字からも、日本の家計では現金や預金が金融資産の大きな部分を占めていることが分かります。預金は日常生活や緊急時への備えとして重要です。

ただし、家計全体の平均的な構成が、そのまま自分に適した資産配分になるわけではありません。必要な生活費、年金収入、持ち家の有無、家族構成、健康状態、投資経験などによって、適した配分は異なります。

預金比率を下げること自体を目的にしない

「日本人は預金を持ちすぎている」という情報を見て、急いで投資を始める必要はありません。資産運用の目的は、預金比率を下げることではなく、自分の生活設計に合った形で資金を管理することです。

退職後の生活費に不安がある人は、投資よりも先に毎月の収支を確認する必要があります。年金やその他の収入で生活費をどの程度賄えるのか、不足分はいくらか、預金を何年間取り崩せるのかを整理すると、投資に回せる金額が見えやすくなります。