仕組みと罠を先に知る

リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りて、原則として契約者が亡くなった後に「自宅の売却」などで元本を返す仕組みです。まとまった資金を確保しながら住み続けられる点が魅力に見えますが、金利や不動産評価の変動、相続人の負担、同居条件など、契約後に「こんなはずでは」となりやすい落とし穴があります。大切なのは、借りられる額ではなく「最後にどう返し、誰に影響が出るか」まで含めて、契約書の条件を具体的に確認することです。

リバース契約の全体像を知る

リバースモーゲージは、担保となる不動産の評価にもとづき「融資限度額(上限)」が決まり、その範囲内で借入(または定期的な受取)を行うのが一般的です。生存中は利息の支払いが中心(商品によっては利息を元本に組み入れる方式もあります)で、亡くなった後に自宅を売却して一括返済する、または相続人が現金で返済して家を残す、といった形で清算します。ここで重要なのは、契約のタイプや資金使途によって中身が大きく異なる点です。例えば、住宅金融支援機構の「リ・バース60」は資金使途に制限があり、生活資金には利用できないなど、同じ“リバース系”でも設計が違います。

金利上昇で返済負担増注意

罠になりやすいのが金利変動です。多くのリバースモーゲージは変動金利型が中心で、金利が上がると利息負担が増えます。生存中に利息を支払うタイプなら毎月の負担が増え、利息を元本に組み入れるタイプなら借入残高の増加が早まり、最終的な返済総額が膨らむ可能性があります。さらに、借入残高が増えるほど「相続時に家を残せるか」「売却で完済できるか」の判断も難しくなります。金利タイプ(変動・固定期間選択など)と、金利見直しのタイミング、利息の支払い方法(毎月支払うのか、元本に組み入れるのか)を、契約前に必ず確認してください。

担保評価下落の危険に備える

もう一つの落とし穴が、不動産評価の見直しです。リバースモーゲージは担保評価を定期的に見直す仕組みが多く、評価額が下がると融資限度額も下がり得ます。すると、まだ資金が必要でも上限に届いてしまい、新たに借りられなくなることがあります。特に、土地評価や立地条件、物件種別、エリア要件によって、そもそも利用できない・評価が伸びないケースもあります。契約前に、評価見直しの頻度、評価が下がった場合の扱い(限度額の再計算、追加借入停止など)、そして「どの条件だと利用継続が難しくなるのか」を、書面で押さえることが重要です。

長生きで資金枯渇リスクを知る

老後資金の手当てとして考える場合、「長生きすると資金が足りなくなる」リスクも見落とせません。融資限度額がある以上、一定額に達するとそれ以上借りられない設計が基本です。つまり、想定より長く生活が続いたとき、リバースモーゲージだけでは資金が尽きる可能性があります。また、介護や医療で急に支出が増えたときに、追加の借入ができないと家計が詰むこともあります。最初に受け取った現金が大きく見えても、「何年分の不足を埋められるのか」「足りなくなった後の手当て(年金、貯蓄、他の制度)はあるか」を、先に試算しておくのが安全です。

相続人トラブル回避の確認

相続の場面は、最も揉めやすいポイントです。亡くなった後に自宅売却で返済するなら、家は原則として残せません。一方、家を残したい場合は相続人が現金で返済する必要が出ることがあり、相続人の資金事情によっては現実的に難しくなります。さらに注意したいのが、契約が「リコース型(不足分を相続人が負担する可能性がある)」なのか、「ノンリコース型(原則として担保売却の範囲で清算)」なのかという点です。家族の理解がないまま進めると、いざという時に「聞いていない」「家を残せると思っていた」と対立が起きやすいので、契約前に相続人候補と返済方法・家の扱いを具体的に話し合い、書面の条件と突き合わせておきましょう。

契約条件の確認術と注意点

契約前に必ず確認したいのは、同居・転居・売却・修繕など「暮らし方」に関わる制限です。商品によっては、本人と配偶者以外の同居人がいると利用できない、転居すると契約条件に影響する、といった制約があり得ます。また、繰上返済の可否や手数料、期限の利益喪失(一定条件で一括返済を求められる可能性)、保証料・事務手数料などの諸費用も、トータルの負担を左右します。説明を聞いて理解したつもりでも、後から揉めやすいのは「例外条件」や「小さな文字の特約」です。重要事項説明書と契約書で、①資金使途、②金利と見直し、③担保評価の見直し、④同居条件、⑤返済方法(死亡後の手続き含む)、⑥相続人の負担有無、⑦手数料体系、をチェックリスト化して確認するのがおすすめです。

代替策と比較の視点を持つ

リバースモーゲージが合わないケースもあります。例えば、生活資金として毎月の不足を補いたいのか、リフォームや住替えなど目的が明確な資金なのかで、向く商品が変わります。また、低所得の高齢者世帯を対象にした公的な貸付制度(自宅を担保に生活資金を借りる仕組み)が案内されている場合もあります。民間商品に決め打ちする前に、(1)通常の不動産売却、(2)不動産担保ローン、(3)公的制度、(4)支出見直しや住み替え、といった選択肢と比較し、「最終的に家をどうしたいか(残すか売るか)」を軸に検討すると判断がぶれにくくなります。

比較で迷う人の早見表

選択肢向きやすい目的注意しやすい点
民間のリバース系生活費や介護費の補填など幅広い金利変動、評価見直し、相続人負担の有無
リ・バース60リフォーム、建替え、住替え等資金使途に制限(生活資金不可など)、金利タイプ
公的な貸付制度低所得世帯の生活資金支援対象条件や上限、自治体ごとの差

最後に、リバースモーゲージは「自宅を担保にする借入」であり、金利や不動産価格、家族状況の変化で結果が大きく変わります。契約前に、複数の提供先で条件を比較し、相続人を含めた将来の清算方法まで具体的に確認したうえで判断してください。

出典:国民生活センター「国民生活 2022年12月 特集 老後の住宅資産活用の注意点」住宅金融支援機構「リ・バース60」目黒区「自宅を利用した資産運用は慎重に検討してください」