親の家を相続するとき、「とりあえず名義はそのまま」「相続税はうちには関係ないはず」と考えてしまう人は少なくありません。ですが、家の相続は、現金だけの相続よりも判断を誤りやすいのが特徴です。なぜなら、不動産は分けにくく、評価の考え方も複雑で、手続きの期限もあるからです。特に相続税は、基礎控除の範囲内かどうかを確認しないまま進めると、申告漏れや特例の取りこぼしにつながることがあります。ここでは、家の相続でやってはいけないことを、相続税の注意点とあわせて整理します。
「家があるだけだから相続税はかからない」と思い込まない
家の相続でまず避けたいのが、相続税は無関係だと決めつけることです。相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超えると課税対象になります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算するため、実家の土地と建物に預貯金などを合算すると、思っていたより基礎控除を超えるケースがあります。特に都市部の持ち家は、建物より土地の評価が大きくなりやすく、「古い家だから価値は低いはず」という感覚だけで判断するのは危険です。
相続登記を後回しにしない
家を相続したのに名義変更を先送りするのも、やってはいけないことの一つです。相続登記は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。以前は登記を後回しにしている家庭も少なくありませんでしたが、今は義務化されており、放置が許される流れではありません。名義が古いままだと、売却や担保設定の話が進めにくくなるだけでなく、相続人が増えて権利関係が複雑になる原因にもなります。
実家の評価や特例を確認しないまま遺産分割しない
家の相続では、誰が住むのか、売るのか、持ち続けるのかによって、相続税の見え方が変わることがあります。代表的なのが小規模宅地等の特例です。一定の要件を満たすと、被相続人の居住用や事業用の宅地について、相続税評価額を大きく減額できる場合があります。ところが、この特例はどの宅地でも無条件に使えるわけではなく、相続人の状況や利用の仕方などで要件が変わります。遺産分割を急いで決めた結果、本来使えたはずの特例を生かせないと、税額に大きな差が出ることがあります。
「住む人」と「相続する人」の整理が重要
実家を誰が引き継ぐのかを曖昧にしたまま進めると、相続税対策もしにくくなります。たとえば、同居していた人が住み続けるのか、別居の相続人が取得するのかで、検討すべき特例や今後の選択肢は変わります。相続税の申告が必要かどうかを判断する前に、まずは財産の全体像と、家の扱いを整理することが欠かせません。
申告期限の10か月を軽く見ない
相続税の申告と納税には期限があります。原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告しなければなりません。家の相続は、戸籍の収集、遺産分割の話し合い、不動産の評価確認などに時間がかかりやすく、気づけば期限が迫っていたということもあります。しかも、期限後になると加算税や延滞税がかかる場合があるため、「家のことがまだ決まらないから後で考える」は危険です。
売却前提なのに取得費や税負担を調べない
相続した家をいずれ売るつもりなら、相続税だけでなく、その後の譲渡所得の考え方まで視野に入れておくと失敗しにくくなります。相続した不動産は、被相続人の取得費を引き継ぐ考え方が基本になるため、「相続した時点の時価がそのまま取得費になる」と誤解すると、売却時の税金を読み違えやすくなります。相続の段階で資料を整理しておくことは、後の売却でも役立ちます。
家の相続は、税金より先に「整理不足」で失敗しやすい
家の相続で本当に避けたいのは、税額そのものよりも、「確認不足のまま進めて取り返しがつかなくなること」です。相続税がかかるかどうかを早めに見極める、相続登記を放置しない、実家に使える特例がないか確認する、申告期限を逆算して動く。この4つを押さえるだけでも、失敗の多くは防ぎやすくなります。不動産の相続は感覚で進めず、期限と特例を先に確認することが大切です。





