
注意点3:元本割れのリスクがある
投資に絶対はない
NISAを利用すると、投資による利益が非課税になるという大きなメリットがあります。しかし、あくまで対象は株式や投資信託といった「価格が変動する商品」です。銀行預金や国債のように元本が保証されるものではありません。つまり、どんなに慎重に商品を選んでも「元本割れのリスク」をゼロにすることはできないのです。
市場環境の影響を受けやすい
投資のリターンは、市場環境に大きく左右されます。景気後退や金融危機などの局面では、株価や基準価額が一気に下落し、含み損を抱えることも珍しくありません。若い世代であれば、時間を味方にして相場が回復するのを待つことが可能ですが、60歳以上にとってはその「待つ時間」が十分にない場合があります。
取り崩し時期と下落の重なり
例えば、70代で医療費や介護費が増え、投資信託を解約して現金化しなければならないとします。そのタイミングがたまたま市場の低迷期と重なっていたら、損失を抱えたまま資金を取り出すしかありません。これが「必要な時に必要な金額を取り出せない」という高齢者特有のリスクを増幅させます。
心理的負担の大きさ
加えて、シニア世代は「資産を減らしたくない」という気持ちが強い傾向があります。含み損を抱えることで強い不安を感じ、途中で解約してしまうケースも少なくありません。結果として本来得られるはずだったリターンを逃すことになり、「投資を始めたこと自体が失敗だった」と感じてしまう可能性すらあります。
リスクとの付き合い方
- 余裕資金のみで運用する
- 値動きの小さいバランス型投信などを選ぶ
- 複数の商品に分散投資する
これらを実践すれば、リスクを軽減しつつNISAを利用することはできます。とはいえ、60歳以上にとって「安心して老後を過ごす」という観点から見れば、やはり元本割れは大きな懸念材料です。NISAは確かに魅力的な制度ですが、時間の制約、流動性の低さ、そして元本割れのリスクという3つの壁が存在します。
では、これらの注意点を踏まえたうえで、60歳以上の人は本当にNISAをすべきではないのでしょうか?




