60歳以上の人はNISAをすべきでない理由―3つの注意点

注意点2:流動性が低く、需要に合わない可能性がある

投資と生活資金のギャップ

投資は本来「長期的に資産を増やす」ための手段です。一方で、60歳以上になると老後の生活費や医療費、突発的な支出など「今すぐに使えるお金」の必要性が増していきます。ここに投資と生活のギャップが生じます。

NISAで購入した投資信託や株式は、売却すれば現金化できますが、その時点の相場次第で元本を割り込むこともあります。つまり「必要なときに確実に使えるお金」にはなりにくいのです。

高齢期に増える支出

  • 医療費(検査・入院・薬代)
  • 介護サービス費用
  • 住宅のリフォームや修繕
  • 子や孫の教育・結婚支援

これらは突然やってくることが多く、あらかじめ「投資資金を取り崩す計画」を立てていても、その通りにいかないのが現実です。結果として、市場環境が悪いときにやむを得ず売却し、損失を確定させるリスクを抱えることになります。

現金化のタイミングが選べない

NISAの投資商品は、売却すればすぐに現金化できる点では預金と同じです。しかし問題は「売るタイミングが自分の都合で決められない」という点にあります。たとえば株式市場が不調の時期に急な出費が重なると、値下がりした状態で売却せざるを得ません。預金であれば元本が減ることはありませんが、投資ではタイミング次第で資産が目減りしてしまうのです。

生活資金と投資資金の線引き

このようなリスクを避けるには、「生活費として使うお金」と「投資に回すお金」を明確に分けておくことが不可欠です。特に60歳以上では、年金収入や預貯金をベースに日常生活を維持し、NISAはあくまで余裕資金で行うのが現実的です。投資の基本は「余裕資金で長期運用」。必要資金を投資に組み込んでしまうと、流動性の低さが大きなデメリットに変わってしまいます。

このように、NISAは必要な時に資金を自由に使えるという意味での「安心感」に欠けています。しかも、60歳以上にとってはもう一つ大きな問題が残されています。それは投資で避けられない「元本割れのリスク」です。

次のページでは、NISAの元本割れリスクがシニア世代にどうデメリットとなるのか、詳しくみていきます。