普通預金の金利がほぼゼロに近い状況では、「お金を眠らせるよりも、しっかり増やしたい」というニーズが高まります。そこで注目されるのが、平均より高いリターンをねらう“高利回り”の資産運用です。
ただし、利回りが高いほど値動きや元本割れのリスクも大きくなるのが投資の大原則。本記事では、比較的メジャーで実践しやすい7つの選択肢を、特徴・リスク・始め方のヒントとともに整理します。高利回りを追うほど「分散」「資金配分」「期間設計」がカギになる点を意識しつつ、自分に合う選択肢を見つけてください。
1. 国内株式投資(個別株)
特徴
日本企業の個別株に投資する方法です。値上がり益(キャピタルゲイン)に加え、配当金や株主優待といったインカム要素も魅力。高配当株を中心に組めば、配当利回り3〜5%台を狙えるケースもあります。
主なリスク
企業業績や景気動向により株価が大きく上下します。個別企業への依存度が高いほど、ネガティブ決算や不祥事の影響も直接受けやすく、銘柄選定の難易度が上がります。
始め方のヒント
まずは証券口座を開設し、配当方針が明確で財務が健全な企業から検討。セクター分散(製造業・インフラ・金融など)を意識し、1社に資金を集中させないことが基本です。
2. 米国株・海外株式(ETF含む)
特徴
米国市場は長期の株主還元姿勢とイノベーションで成長してきました。S&P500など広範囲に分散されたETFは、個別株よりもリスクを抑えつつ世界の成長を取り込みやすい手段です。為替も味方すれば円ベースのリターンが底上げされる局面もあります。
主なリスク
為替変動によって円換算の評価額が変動します。米国の金利政策や景気サイクル、地政学リスクの影響も受けます。
始め方のヒント
まずは指数連動ETF(例:広範な市場に分散)から。円貨決済か外貨決済か、為替コストも確認。積立で時間分散すると入りやすくなります。
3. J-REIT/海外REIT(不動産投資信託)
特徴
オフィス・商業施設・物流・住宅などの不動産から得られる賃料収入を投資家へ分配する仕組みで、配当利回りは概ね3〜5%台が目安。小口で不動産収益にアクセスできるのが利点です。
主なリスク
金利上昇局面では評価が下がりやすく、空室率や賃料改定の状況にも左右されます。市況悪化時は価格・分配金ともに低下する可能性があります。
始め方のヒント
用途(オフィス・物流・住宅)の分散、銘柄の内部留保・LTV(負債比率)・スポンサー力をチェック。国内外のREITをミックスするのも手です。
4. 高配当ETF(国内外)
特徴
高配当銘柄を一定の基準で組み入れたETF。個別株より分散が効き、配当利回り4〜6%を目安に狙える商品もあります。組み入れやリバランスはETF側で自動的に行われるため、手間が少ないのも魅力です。
主なリスク
景気後退時は配当の原資となる企業利益が落ち込み、減配や価格下落が起こり得ます。配当だけでなくトータルリターンで評価しましょう。
始め方のヒント
指数の設計(配当水準重視か、クオリティ重視か)と経費率を確認。地域分散(日本・米国・グローバル)を組み合わせると偏りを減らせます。
5. ソーシャルレンディング
特徴
インターネット上のプラットフォームを通じ、事業者へ資金を貸し付けて利息を受け取る仕組み。案件によっては年5〜8%程度の表面利回りが提示されることもあります。
主なリスク
最大のリスクは貸し倒れ(デフォルト)。担保評価や保証の実効性、運営会社の審査体制の信頼性を見極める必要があります。途中解約や流動性が制限されるケースも多い点に注意。
始め方のヒント
運営会社の開示姿勢・案件の透明性・回収実績をチェック。複数案件・複数事業者に小口分散し、生活資金は投入しないルールを徹底しましょう。
6. 不動産クラウドファンディング
特徴
小口で不動産開発や賃貸事業に出資し、配当や売却益の分配を受ける仕組み。案件によって年4〜7%程度の利回り目標が掲げられます。実物不動産よりも少額・短期で参加しやすいのがメリットです。
主なリスク
プロジェクトの計画遅延や想定賃料との差異、売却不調などで分配が下振れする可能性があります。元本保証ではありません。
始め方のヒント
運営会社の実績、物件の立地・用途・稼働率、出口戦略(売却先・期間)を確認。期間の異なる案件へ分散し、満期のずれで資金繰りを安定させましょう。
7. 仮想通貨(暗号資産)+ステーキング/レンディング
特徴
価格変動が非常に大きい一方、短期間で高リターンが得られる可能性もあるのが暗号資産。対象銘柄やサービスによってはステーキングやレンディングで追加利回りを得られる場合があります。
主なリスク
ボラティリティ(価格変動)が極めて高く、短期で大幅な下落もあり得ます。取引所・カストディのリスク、規制変更、ハッキング等のテールリスクも考慮が必要です。
始め方のヒント
資産全体のごく一部にとどめ、主要銘柄中心で分散。二段階認証やコールドウォレットなどセキュリティ対策を徹底し、借入での投資は避けましょう。
ポートフォリオ設計と注意点
分散・配分・期間を決める
高利回り戦略は「当たり外れ」の振れ幅が大きく、単品勝負は振り回されがちです。国内外株・REIT・債券・オルタナティブ(クラファン・暗号資産など)を組み合わせ、資産ごとの役割と上限比率を決めましょう。積立で時間分散し、年1回程度のリバランスで配分を元に戻すとリスク管理がしやすくなります。
生活防衛資金の確保
突発的な支出に備え、生活費の6〜12か月分は現金または流動性の高い資産でキープ。これがない状態で高利回り商品に踏み込むのは禁物です。
税金・コスト・流動性
信託報酬や売買手数料、為替コスト、分配金の課税など、手数料と税制は最終リターンを大きく左右します。出口時(売却・満期)の流動性も事前に確認しましょう。
まとめ
高利回りの7選は、いずれも魅力とリスクが表裏一体です。要点は「一極集中しない」「生活防衛資金を守る」「時間分散する」の3つ。まずは少額で試し、値動きや自分の心理的耐性を測りながら配分を調整しましょう。狙う利回りは“年率で何%・どのリスクを許容するか”という設計の問題です。欲張りすぎず、続けられるルールで運用を積み上げていくことが、結果的に最短の近道になります。