アパート・マンション投資の提案は、うまくいく部分だけが強調されやすい分、「確認する順番」を間違えると判断がブレます。特に、数字がきれいに見える提案ほど、前提条件が少し崩れただけで手残りが大きく変わることがあります。甘い話に乗らないために大切なのは、相手を疑うことよりも、確認すべきポイントを決めて淡々とチェックすることです。ここでは、よくある“型”と、外しにくい質問のセット、断り方まで整理します。

甘い話には「よくある型」がある

型1:満室前提で話が進む

「このエリアは需要が強いので埋まります」という説明はよくあります。しかし、需要があることと、あなたの物件が埋まり続けることは別です。近隣の競合、築年数の進行、設備の見劣り、家賃の下落など、埋まりにくくなる理由は時間とともに増えます。満室が続く前提ではなく、空室が出たときの手当てまで含めて説明できるかが、提案の質を見分ける基準になります。

型2:家賃が下がらない前提になっている

「今の家賃で回ります」という表現も要注意です。周辺に新築やリノベ物件が増えると、同じ家賃では決まりにくくなることがあります。家賃が下がった場合の収支、下げずに決めるための打ち手(設備・募集条件・リフォーム)まで含めて、現実的に語られているかを確認します。

型3:支出が小さく見積もられている

提案資料では、管理費や修繕費、原状回復、広告費、税金、保険などが薄く扱われがちです。特に、退去が出たタイミングで費用がまとまって出る点を軽視すると、手元資金が一気に減ります。収支は「いいケース」ではなく「悪いケース」を基準に組むほど、甘い話を見抜きやすくなります。

型4:出口の説明が曖昧

「将来は売ればいい」という説明が抽象的なままだと危険です。売る相手が投資家なのか、実需(住む人)なのかで、価値のつき方も売れやすさも変わります。出口戦略が弱い提案は、買う理由が“今の数字”に寄りすぎている可能性があります。

型5:「あなたなら大丈夫」と相性で押してくる

「この物件はあなたに合う」「属性がいいから通る」など、言葉で安心させる提案もあります。投資は相性より、前提と数字とリスクの整合性で決めるべきです。安心材料が言葉だけで、裏付けが書面やデータで出てこない場合は、慎重に扱った方が安全です。

騙されないための確認の順番

順番1:家賃の根拠を固める

家賃が崩れると利回りも手残りも崩れます。周辺相場と比べて強気になっていないか、築年数や設備の条件に対して妥当か、退去後も同水準で決まる見込みがあるかを確認します。募集が決まっている事例があるなら、成約条件(家賃、礼金、フリーレント等)まで具体的に聞くとズレが見えます。

順番2:空室期間の前提を現実寄りにする

「空室ゼロ」で回る収支は、現実に弱い設計です。平均的な募集期間はエリアや時期で変わるため、一定期間の空室が起きても耐えられるかを見ます。空室が長引いた場合に、家賃調整以外でどんな打ち手があるか(募集条件、写真、設備、広告の強化など)も合わせて確認します。

順番3:将来の修繕と退去コストを見える化する

購入直後は問題がなくても、数年後に設備交換や大規模修繕が重なると手残りは急に落ちます。修繕履歴があるなら、次に来る出費の見通しを聞きます。履歴が薄い場合は「何がどの時期に起きやすいか」を前提として置き、資金計画に織り込むことが重要です。

順番4:ローンと金利上昇に耐えられるかを見る

ローン返済は空室でも止まりません。変動金利なら、金利が上がったときの返済増も考えます。ここを甘くすると、短期の利益に見えても継続が難しくなります。「返済を払ったうえで、どれくらい余裕が残るか」を冷静に見ます。

順番5:出口を具体化する

売却先の候補を絞るほど、買うべき条件が明確になります。投資家向けなら利回りと運用のしやすさ、実需向けなら立地や間取り、居住性が重要になります。出口の候補が見えない物件は、買ったあとに動けなくなるリスクが高まります。

確認質問集:これだけ聞けばズレが出る

家賃・需要を確かめる質問

  • 近隣の類似物件の成約家賃は、どの条件(築年数・駅距離・設備)でいくらですか
  • 退去が出た場合、想定される募集期間はどれくらいですか
  • 同じ家賃で決めるために、必要になりそうな条件変更は何ですか

費用と修繕を確かめる質問

  • 直近の修繕履歴と、今後数年で起きやすい設備交換は何ですか
  • 退去時の原状回復は、過去の実績だと平均いくらくらいですか
  • 募集時の広告費や仲介条件はどの程度見込んでいますか

管理と運用を確かめる質問

  • 管理会社の業務範囲と費用、対応時間、緊急時の窓口はどうなっていますか
  • 入居審査の基準と、滞納時の対応フローはどうなっていますか
  • 月次の報告内容(空室・反響・内見・申込など)は何が出ますか

出口を確かめる質問

  • 想定している売却先は投資家ですか、実需ですか
  • 同条件で過去に売却された事例(価格・期間・買い手像)はありますか
  • 売れない場合の次の選択肢(賃料調整、リフォーム、保有継続)は何ですか

断り方のコツ:角を立てずに距離を取る

「前提が固まっていない」を理由にする

断るときは、相手の人柄を否定せず「判断に必要な前提が固まっていない」という理由にすると角が立ちにくいです。例えば、家賃の根拠や修繕の見通し、出口の想定が揃わない段階では決めない、という姿勢を示します。

「比較検討」を自然に入れる

「同条件の別物件とも比較したい」「管理会社の体制も含めて検討したい」と伝えると、過度な押し込みを避けやすくなります。比較の前提がある人には、強引な提案が通りにくいからです。

即決を迫られたら“条件”で返す

「今日決めるなら」「今だけ」といった即決圧がある場合は、感情で対抗せず、条件で返します。「必要書類が揃ってから判断します」「修繕と募集条件の根拠が確認できたら検討します」と、判断の条件を提示するとブレにくくなります。

甘い話を避ける人ほど、最後に強くなる

不動産投資で大きく失敗しやすいのは、物件の良し悪し以前に「確認の順番」を飛ばしたときです。家賃の根拠、空室の前提、将来の支出、ローン耐性、出口の具体化。この順番で淡々とチェックできれば、甘い話は自然と通りにくくなります。次は、出口戦略をさらに具体化して「買う前に売り方を決める」考え方を整理します。

※免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の物件・投資手法の勧誘や助言を行うものではありません。家賃収入や利回り、費用、税金、ローン条件、法令・制度は物件や契約内容、地域、市況により異なります。最終判断はご自身の責任で行い、必要に応じて不動産会社・金融機関・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。