表面利回りが高い物件を見ると「お得に見える」一方で、実際はリスクが織り込まれて数字だけが良く見えているケースもあります。家賃が下がりやすい、空室が長引く、修繕費が重い、売るときに買い手がつきにくいなど、あとから効いてくる要素は広告や提案資料では目立ちにくいものです。ここでは、利回りに惑わされず「危ない物件」を早めにふるい落とすためのチェックポイントを整理します。

利回りが高く見える仕組みを知る

表面利回りは「見せ方」で盛れる

表面利回りは、家賃収入を購入価格で割った単純な数字です。管理費、修繕、空室、税金、広告費、原状回復費などの支出は反映されません。さらに、家賃が「満室想定」「短期だけ高い賃料」「周辺相場より強気」になっていると、数字は簡単に高く見えます。最初に見るべきは、利回りそのものより「家賃の根拠」と「支出が出たあとの手残り」です。

高利回りはリスクのサインになりやすい

利回りが高い物件が必ず悪いわけではありません。ただし、相場より安い価格で売られている場合は、安い理由があることも多いです。立地や建物状態、入居者属性、将来の需要、災害リスク、再建築や法規制など、何が「安さ」の背景なのかを分解して判断すると、引っかかりを見つけやすくなります。

危ない物件を見抜く10のポイント

  1. 家賃が相場から浮いていないか

    周辺の類似物件と比べて家賃が高い場合、退去後に家賃を下げないと決まらないことがあります。募集サイトの近隣相場だけでなく、築年数・駅距離・間取り・設備条件が近い物件で比べるとズレが見えます。

  2. 入居率の根拠が「今」だけになっていないか

    満室稼働は魅力的ですが、たまたま埋まっているだけのこともあります。退去予定、入居期間の偏り、同じ時期に一斉退去の可能性がないかなど、履歴を確認すると再現性を判断しやすくなります。

  3. 修繕履歴と「次に来る出費」を把握できるか

    屋上防水、外壁、給排水、エレベーター、給湯器など、大きな出費は周期が読めます。履歴が薄い物件ほど、購入後にまとまった費用が出やすいので、直近と今後の修繕見込みをセットで見ます。

  4. 管理状態が数字に反映されていないか

    共用部が汚れている、掲示物が放置されている、郵便受けが荒れているなどは、入居者の質や定着率に影響します。室内だけでなく建物全体の状態を見ると、利回りの裏側が見えます。

  5. 立地の弱点が「埋まりにくさ」になっていないか

    坂がきつい、夜道が暗い、周辺の生活利便が弱い、駅からの体感距離が長いなどは、地図だけでは分かりにくい弱点です。現地で歩くと、募集で苦戦する理由が見つかることがあります。

  6. 賃貸需要が単一要因に偏っていないか

    特定の工場や大学、単一の大型企業に依存していると、環境変化で需要が崩れるリスクがあります。複数の需要源があるか、周辺の人口動向や再開発の影響をざっくり把握しておくと安全です。

  7. 入居者属性と家賃帯が合っているか

    単身向けで家賃が高いのに設備が弱い、ファミリー向けなのに周辺環境が合わないなど、ターゲットと商品がズレると空室が長引きます。「誰が住みたいか」を先に描くと、矛盾に気づきやすくなります。

  8. 法規制・権利関係で「売れにくい」要素がないか

    再建築不可、接道条件が厳しい、用途地域や建ぺい率・容積率の制限、借地権、共有持分などは、出口で買い手が限られやすい要素です。買う前に「売るときの買い手像」を想定しておくと詰みにくくなります。

  9. 災害・ハザードの影響を受けやすくないか

    浸水、土砂、液状化などのリスクが高い地域は、保険料や入居者の敬遠につながることがあります。リスクがあること自体より、対策や影響度を織り込んだ価格・家賃設定になっているかが重要です。

  10. 売主・仲介の説明が「確認できない前提」に依存していないか

    「すぐ埋まる」「この家賃でいける」「修繕は大丈夫」など、根拠が曖昧な説明は要注意です。書面で確認できるもの(賃貸借契約、修繕履歴、管理規約、レントロールなど)に落とし込めるかで、信頼度が変わります。

数字だけで決めないための確認手順

まずは「家賃の根拠」を固める

家賃が現実的かどうかが崩れると、利回りの前提が全部崩れます。周辺相場と比べて上振れしていないか、退去後も同水準で決まるか、家賃帯に対して設備や立地が釣り合っているかを優先して見ます。

次に「将来の支出」を見える化する

修繕・設備交換・原状回復・広告費など、起きやすい支出を並べるだけで、危ない物件は絞れます。完璧な見積もりは難しくても、「いつ」「何が」「どれくらい起きそうか」を把握しておくと判断がブレにくくなります。

最後に「出口」を想定して合格ラインを決める

買い手がつきにくい条件がある場合、出口の選択肢が狭くなります。売却・保有継続・建て替え・リフォームなど、現実的な選択肢が何かを考えたうえで、価格がそれに見合っているかを判断します。

見落としがちな注意点

利回りが少し下がっても安全性が上がることがある

同じエリアで比べたとき、利回りが高い物件が常に優秀とは限りません。空室が短い、修繕が読みやすい、出口が広いなど、見えにくい強さがある物件は、数字以上に運用が安定しやすい傾向があります。

「確認できないこと」が多い物件は避けやすい

資料が揃わない、説明が口頭中心、質問への回答が曖昧という場合、リスクの中身が見えません。見えないリスクを抱えるより、見える範囲で判断できる物件を選ぶ方が、結果として失敗を減らしやすくなります。

※免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の物件・投資手法の勧誘や助言を行うものではありません。家賃収入や利回り、費用、税金、ローン条件、法令・制度は物件や契約内容、地域、市況により異なります。最終判断はご自身の責任で行い、必要に応じて不動産会社・金融機関・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。