老人ホームの入居費用を確保するために、実家を売却する判断をする家庭は少なくありません。ただし不動産売却は、名義や相続、共有関係、税金の論点が絡みやすく、段取りを間違えると「売りたいのに売れない」状態になります。ここでは、実家を売って入居費用に充てるための手順を、詰まりやすいポイントから逆算して整理します。

最初に名義と相続状況を確認する

売却の前提は「登記上の名義」と「権利関係」です。親名義のまま相続が発生している場合、相続登記が済んでいないと売却手続きで止まる原因になります。共有になっている場合は、共有者の同意が必要になるため、さらに時間がかかることもあります。

入居費用のゴールを決める

売却は「いくらで売れるか」だけでなく、「入居後の支払いが継続できるか」が重要です。施設の見積もりを取り、入居時に必要なお金と、月額費用の上限を先に決めましょう。売却代金は、(1)入居時費用に回す枠、(2)月額の補填に回す枠、に分けて考えると計画が安定します。

売却の流れをスケジュール化する

一般的な流れは、査定→媒介契約→販売活動→売買契約→決済・引渡しです。入居時期に合わせるためには、査定段階で「いつまでに現金化したいか」を不動産会社に伝え、売り出し価格と販売戦略をすり合わせることが大切です。急ぐほど値下げ圧力が強まることもあるため、入居までの「つなぎ」(在宅サービス、ショートステイ等)も並行で検討しておくと焦りが減ります。

共有名義は早めに合意形成する

共有名義の実家は、売却の同意形成が最大の壁になります。売る/売らない、価格、時期、売却代金の分け方で揉めやすく、話し合いが長期化しがちです。後回しにすると相続が重なって権利関係が複雑化する恐れもあるため、早い段階で「窓口は誰か」「売却後のお金は何に充てるか」を整理し、家族で合意を取りにいくことが重要です。

税金の特例を先に当たっておく

売却益が出る場合は、譲渡所得の論点が出てきます。自宅(居住用財産)を売った場合の3,000万円特別控除など、要件を満たせば税負担が変わる可能性があります。また、相続した家(空き家)を一定要件で売った場合の特例もあります。どの特例が使えるかは、住んでいた状況や時期、書類の揃えやすさで変わるため、売買契約の前に要件を確認しておくと安心です。

出典:法務省(相続登記の申請義務化Q&A)

出典:国税庁(No.3302 マイホームを売ったときの特例)

出典:国土交通省(相続した空き家の譲渡所得特例の概要)