老後の生活費は「平均で月◯万円」と言われても、住まい(持ち家か賃貸か)や車の有無、医療費のかかり方、どんな暮らしをしたいかで大きく変わります。そのため、数字だけを見て不安になったり、逆に安心しすぎたりしがちです。

この記事では、公的な統計を「土台」にしながら、あなたの固定費や将来の突発費を足していく形で「自分にとって安心できる月額」を作る考え方を整理します。夫婦・単身それぞれの目安や、見落としやすい出費も含めて、無理のない計画に落とし込めるように解説します。

結論:安心ラインは「平均+自分の固定費+予備費」で決まる

「老後の生活費は月いくら必要?」と聞かれると、ひとことで答えにくいのは事実です。住まい(持ち家か賃貸か)、車の有無、医療費や介護の備え、交際費や旅行などの過ごし方で、必要額が大きく変わります。

とはいえ、ゼロから考えると不安になりやすいので、まずは公的な統計に出てくる「65歳以上・無職世帯の平均」を土台にし、あなたの固定費(家賃・住宅ローン・車・保険など)と、突発費に備える予備費を上乗せして「自分の安心ライン」を作るのが現実的です。

まずは平均:65歳以上・無職世帯の家計はどれくらい?

総務省「家計調査(家計収支編)」の2024年平均には、65歳以上の無職世帯の収支イメージが掲載されています。ここでは、生活費の中心になる「消費支出」を目安として押さえます。

世帯タイプ(65歳以上・無職)消費支出(月)可処分所得(月)ポイント
夫婦のみ約25.7万円約22.2万円平均では「支出>手取り」になりやすい
単身約14.9万円約12.1万円単身も不足が出やすい

この数字は「平均」なので、あなたにそのまま当てはまるわけではありません。ただ、目安としては、夫婦で月25万円台、単身で月15万円前後が、日々の支出の基準になりやすいと捉えると計画が立てやすくなります。

「生活費」を分解すると、不安の正体が見える

老後の生活費は、まとめて考えるよりも、次の3つに分けた方が安心ラインを作りやすくなります。

1)毎月ほぼ固定で出ていくお金

  • 住まい:家賃、住宅ローン、管理費、修繕積立金
  • 通信:スマホ、ネット
  • 移動:車(維持費)、駐車場、交通費
  • 保険:民間保険の保険料(入っている場合)

2)生活の基本になるお金(変動はあるが毎月出る)

  • 食費
  • 光熱・水道
  • 日用品
  • 医療(通院・薬など)

3)年単位で波が出るお金(見落としやすい)

  • 家電の買い替え、住まいの修繕
  • 冠婚葬祭、帰省、旅行
  • 歯科・眼科などのまとまった出費
  • 介護が必要になったときの自己負担

「毎月いくら?」という問いは、このうち3)の波をどう見込むかで、安心感が大きく変わります。月の予算に入れず、別枠の積立(予備費)として確保しておくと、急な出費でも家計が崩れにくくなります。

年金で足りる?先に「収入の目安」を押さえる

老後の主な収入は公的年金です。年金額は加入状況で個人差が大きいため、まずは「制度としての目安」を知り、その後に自分の見込み額を確認する流れがおすすめです。

国民年金(老齢基礎年金)の満額

国民年金は、条件を満たしたうえで保険料を40年分すべて納めた場合に満額となります。令和7年度の満額は月額6.9万円台が目安です(生年月日で金額が異なる注記があります)。

厚生年金のモデル(標準的な年金額)

会社員期間が長い人は厚生年金が上乗せされます。制度の説明として、夫婦2人分の基礎年金を含む「標準的な年金額(モデルケース)」が公表されており、令和7年度は月額23.2万円台が示されています。

ここは「平均」ではなくモデル値なので、あなたの受給額の確定ではありません。とはいえ、生活費の検討を始めるときの土台にはなります。

安心かどうかは「住まい」で大きく変わる

老後の生活費で一番差が出やすいのは住まいです。

持ち家でも「0円」ではない

持ち家でも、固定資産税、火災保険、マンションなら管理費・修繕積立金、戸建てなら修繕費の積立が必要です。「家賃がない=安心」と決めつけず、毎月の積立として見込んでおくと計画が安定します。

賃貸は「家賃+更新・引っ越しの可能性」も

賃貸の場合は家賃がそのまま固定費になります。将来、住み替えが必要になる可能性もあるため、更新料や引っ越し費用が出るケースも想定しておくと安心です。

「月いくらあれば安心?」を作る3ステップ

ステップ1:まずは統計の平均をベースに置く

  • 夫婦:消費支出「約25.7万円」
  • 単身:消費支出「約14.9万円」

ここに、あなたの住まい・車・保険などの固定費を確認して足し引きします。

ステップ2:年単位の出費は「毎月の予備費」に変換する

家電の買い替え、住まいの修繕、冠婚葬祭など、毎月は出ない出費は、年間の想定額を12で割って毎月の積立(予備費)として確保しておくと安心です。

ステップ3:医療・介護は「増える前提」で余白を残す

医療費や介護は、若い老後(60代後半)よりも、年齢が上がるほど増えやすい傾向があります。今の支出が低めに見えても、将来の変化に備えて「最初から余白」を作っておくと、後で慌てにくくなります。

ケース別:安心ラインの作り方(イメージ例)

ここでは、統計の平均を土台に「考え方」を示します。あなたの金額を決めるときは、固定費と予備費をあなたの状況に合わせて置き換えてください。

夫婦・持ち家(家賃なし)

  • 土台:消費支出 約25.7万円
  • 上乗せ:住まいの維持(管理費・修繕積立・修繕の積立など)+予備費

持ち家でも、修繕や設備更新が重なる時期があります。「月々の積立」として組み込むと安心です。

夫婦・賃貸(家賃あり)

  • 土台:消費支出 約25.7万円
  • 上乗せ:家賃(固定費)+予備費

家賃が加わる分、年金だけで足りるかの確認がより重要になります。必要なら、現役のうちから住み替えの選択肢も含めて検討すると現実的です。

単身・持ち家(家賃なし)

  • 土台:消費支出 約14.9万円
  • 上乗せ:住まいの維持+予備費

単身は、病気や介護などの局面で頼れる手が減りやすい分、「お金でカバーする場面」が出やすいこともあります。予備費は薄くしすぎない方が安心です。

今すぐできるチェックリスト

  • 年金見込み額(ねんきん定期便等)を確認する
  • 住まいの固定費(管理費・修繕積立・家賃・駐車場)を洗い出す
  • 車の維持費を年額で把握する
  • 年に1回以上ある出費(家電、旅行、冠婚葬祭)をリスト化し、毎月の積立に変換する
  • 医療・介護の「増える可能性」を前提に、余白を残す

老後の安心は、「平均より多い/少ない」よりも、「自分の固定費と、波のある支出を見える化できているか」で決まりやすいです。まずは平均を土台にして、あなた用の安心ラインを作ってみてください。

出典:総務省統計局 家計調査(家計収支編)2024年平均日本年金機構(令和7年4月分からの年金額等)